「あ」の高音だと裏返るのに、「お」なら出る。同じ高さなのに。これはあなたの欠点ではなく、物理現象です。仕組みを知ると、母音は敵から味方に変わります。
- 母音によって高音の出しやすさが変わるのは、音の物理で説明できる
- 影響が出るのは主に、声の切り替え地点より上の音域
- プロも実は、高音で母音を少し調整している
1声の中で起きていること
母音の正体は、口の中の形です。「あ」と「い」では、舌の位置も口の開きも大きく違います。
形の違うグラスは、同じようにはじいても違う音で鳴ります。器の形が、響きを決めるからです。口の中も同じです。口の中の形が、声の響き方を決めます。
高い音域では、この響きと声帯の振動が、ぶつかり合ったり助け合ったりする物理現象が起こります。母音によって高音の出しやすさが変わるのは、このためです。
大事なポイントは2つあります。
①この現象が目立つのは、主に声の切り替え地点(換声点)より上の音域です。低い音域では、母音の影響はほとんどありません。
②どの母音が難しいかは、状況しだいで変わるものです。「『あ』は絶対に難しい」のような決まったルールではありません。
2考えられる原因
サビのいちばん高い音に、たまたま難しい母音が乗っているパターンです。物理的に難しい場所を、気合いだけで攻め続けている状態です。
高い音域では、話すときと同じ口の形のままだと苦しくなることがあります。高さに合わせた小さな調整をしていないパターンです。
裏返りやすさや、声帯の閉じの浅さが、難しい母音のときだけ表に出てきている場合もあります。母音は原因ではなく、隠れた問題のあぶり出し役です。
3必要な練習の方向性
方向性は、「母音を敵にせず、練習の道具として使う」ことです。
飛び石で川を渡るときは、大きくて安定した石から順にわたりますよね。練習も同じで、やり方は3つあります。
①歌いやすい母音(「え」「お」や、あいまいな母音)で先に高音の感覚を作ります。そこから苦手な母音へ広げていきます。
②苦手な母音は、いったん近い母音に置き換えて練習し、できるようになってから元に戻します。
③どの母音で・どの高さで崩れるかをメモしておきます(分析の貴重な材料になります)。
ちなみに、プロの歌手も高音では母音を少し調整して歌っていることが多いです。ズルではなく、物理に沿った技術です。
※声の違和感や痛みが続く場合は、発声練習より先に耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
どの母音が、なぜ苦手なのか。それは声の土台の状態とセットで分析する必要があります。SVCの体験レッスンでは、トレーナーがあなたの声を分析し、今の状態に合った練習を処方します。
LINEで体験レッスンに申し込む申し込みの際に「苦手な母音がある」とひとこと添えてください。当日の分析がスムーズになります。